「目指せ!遊牧民」カテゴリーアーカイブ

ぼるふ〜草原記

家畜の名称

《年齢、性別による名称》

馬 Adoo

名称

備考

年齢

1

Onaga

2

Daaga

去勢が行われる年齢

3

Shudlen

犬歯が生える

4

Khyazaala

5

Coeolon

6

Hoviig nas

7歳以上

Ikh nas

その他

種馬

Azraga

メス馬

Guu

去勢馬

Mori

オス馬

Uree

去勢していない馬

メス馬

Baidas

※年齢は、歯を見る。

 

牛 Ukher

名称

備考

年齢

1

Togal

2

Byaroo

3

Gona

オス牛

Gunj

メス牛

4

Dunu

オス牛

Dunj

メス牛

5歳以上

Buduun yher

その他

去勢牛

Shar

オス牛

Bokh

メス牛

Unee

※年齢は、角を見る。1年毎に筋が入る。

羊 Khoni

名称

備考

年齢

1

Khrga

2

Tulug

3

Shuulen khoni

オス羊

Zosag honi

メス羊

4

Khyazaalan honi

5歳以上

Buduun khoni

その他

メス羊

Hoch

山羊 Yama

名称

備考

年齢

1

Ishig

2

Borgon

3

Shudleen

4

Khyazaalan

5歳以上

Buduun yama

その他

メス山羊

Okhna

ラクダ Temee

名称

備考

年齢

1

Botgo

2

Torom

3

Bo

4

Tailag

オスラクダ

その他

オスラクダ

Boor

メスラクダ

Inge

《外見、性格による名称》

★家畜自身の毛色
heer(栗毛)、tsabidar(たてがみと尾が白っぽく、総じて栗色)、zeerd(人参色)、sharga(クリーム色)、hor(葦毛色)、hondan(真っ白、羊のみ)など

★その他の毛色
hogoon(緑色)、olaan(赤色)、bor(灰褐色)

★身体の部分の色や模様
buur alag(まだら)shiir alag(すねがまだら) usgii tsagaa(かかとの白い)

★身体や状態の特徴
hyalman(毛色が白く、白目が多くてまぶしがる)、tunjin(額のない)、dalio evert(でこぼこした角のある)、leg buht(ラクダの横に垂れ下がったコブ)、bugtregtei(背中が隆起した)、ootsan suult(腰より大きい尾のある)、soljir evert(1本角のある)、 selmen evert(サーベルのように細長い角のある)

★混ぜた毛色や特徴
bor harzan(灰褐色の顔に細長く白い部分のある)、har huren(黒茶色)、olaan booral(赤葦毛色)、ohaa yagaan(薄栗毛ピンク色)、hol hongor(葦毛淡黄色)、har heer(黒栗毛色)、har haltar(黒鹿毛色)
★家畜別に付けられた毛色、特徴
borlog(灰色、馬)、orog(灰色、山羊)、hondan(全身真っ白、羊)、hov(耳の小さい、羊、山羊)tarlan(まだら、牛)

★毛並みの特徴
shanhan delt(両側に垂れるたてがみがある)、soilgot(つかむ為に残したたてがみがある)、savgat(胸毛のある)、nooloort(柔毛のある)、arzgar ust(縮れ毛のある)、buun suult(かたまった尾のある)

★性格、性質
yardage huren(強情な茶色)、oroo sharga(捕まえづらいクリーム色)、oorgin tsenher(オールガ用の水色)、hashin heer(遅い栗毛色)、zugtee olaan(頑固な赤色)、govshaa haltar(他の乳まで飲む栗毛の口や鼻に黄白毛の混じった)

★成長過程の特徴
shivree gonij(乳の出やすい3歳メス牛)、haidag halzan(次の子を産まずに乳を出す顔に細長く白い部分のある)、henz huren(遅生まれの茶色)、oogan halion(最年長のかわうそ色)、telee har(2匹の母から乳を飲んだ黒色)

★歩き方(主に馬)
Joroo saaral(側対歩の灰色)、ariljaa heer(hatirとjorooの間の歩き方をする栗毛色)、hatirch bor(ハティルで走る灰褐色)、agsam haltar(狂暴な栗毛の口や鼻に黄白毛の混じった)

《家畜別にみると》

1.馬 Adoo
har(黒色)、heer(栗毛色)、huren(茶色)、bor(灰褐色)、booral(葦毛色)、tsagaan(白色)、tsabidar(たてがみと尾が白っぽく、総じて栗色)、zeerd(人参色)、nogoon(緑色)、borlog(灰褐色っぽい)、heer alag(藍毛色のまだら)、har alag(黒色のまだら)、bor alag(灰褐色のまだら)、tsenher(水色)、olaan heer(赤栗毛色)、olaan bor(赤灰褐色)、olaan booral(赤葦毛色)、har heer(黒栗毛色)、har saaral(黒灰色)、har bor(黒灰褐色)、har huren(黒茶色)

2.牛 Ukher
olaan(赤色)、har(黒色)、huren(茶色)、yagaan(ピンク色)、ohaa(薄栗毛色)、huh(青色)、bor(灰褐色色)、tarlan(ぶち)、har tarlan(黒色ぶち)、bor tarlan(灰褐色ぶち)、olaan alag(赤色ぶち)

3.羊 Khoni
halzan(顔に細長く白い部分のある)、har halzan(黒色で顔に細長く白い部分のある)、bor halzan(灰褐色で顔に細長く白い部分のある)、olaan halzan(赤色で顔に細長く白い部分のある)、har nuden(黒い目の)、bor nuden(灰褐色の目の)、olaan nuden(赤い目の)、har turuut/har tolgoit(黒色の頭の)、bor turuut/ bor tolgoit(灰褐色の頭の)、olaan turuutt/ olaan tolgoit(赤色の頭の)、olaan huzuut(赤い首の)、olaan alag(赤色まだら)、har alag(黒色まだら)、bor alag(灰褐色まだら)、hondan(全身真っ白な)、hov(耳の小さい)、tag(耳のない)

4.山羊 Yama
bor(灰褐色色)、har(黒色)、huh(青色)、saaral(灰色)、orog(灰色)、tsagaan(白色)、huh halzan(青色で顔に細長く白い部分のある)、har halzan(黒色で顔に細長く白い部分のある)、bor halzan(灰褐色で顔に細長く白い部分のある)、zegel(白っぽい灰色)、manhan(白黒ぶち)

5.ラクダ Temee
bor(灰褐色)、olaan赤色)、huren(茶色)、tsagaan(白色)、har(黒色)、zandan(白樺色)、legラクダの横に垂れ下がったコブ)、holboo(近いコブ)、soeo(犬歯のようなコブ)、shiree(まっすぐ立ったコブ)、solbio(交差したコブ)

ぼるふ〜草原記

雪害

モンゴルの冬の雪害ゾド(zod)は一時日本でも報道され、多くの日本人に知られるものとなった。しかし、一口にゾドといっても、いくつかの被害に分けられる。

氷のゾド(Musun zod)

秋の終わりに降った雪が暖かい日中に融け、夜中の寒さで凍りつく。その時に、草同士や地面と草を氷でからまるように凍りつける。そのことによって、草はダメージを受ける他、冬に家畜が雪を掘り起こして草を食べる時に、氷の地面は硬くひづめを痛める。

白いゾド(Tsagaan zod)

大雪が降り、家畜が草を食べられなくなるゾド。低木の生えている地域では、まだ被害が抑えられる。大型家畜のひづめより少し上くらいの積雪だと、家畜が掘り起こして草が食べられるし、ある程度の湿気をもたらし草が生長する。しかし、小型家畜のお腹に届くまでの積雪になると、家畜が掘り起こせなくなるという問題が発生する。秋に蓄えた草があるというものの、この状態が続けば、蓄えはあっという間になくなってしまう。よって、真冬の中、全ての家畜を伴い、冬営地の移動をせざるおえなくなる。このように草を求めて冬に移動することをオトル(otor)という。

ひづめのゾド(Toorain zod)

雪があまり積もらず、草が充分に生えている地域では、家畜の集団が同じ場所を行き来することにより、草が踏みつけられて、草が生えてこなくなり、食料不足となる。本来であれば、遊牧民が草の生長を考え、放牧しなければならないのだが、誤った放牧を行うことによって、このような問題が発生する。

黒いゾド(Har zod)

秋冬にまったく雪が降らないゾド。雪が降らないことによって、充分な湿気がなく、また砂嵐により草が生長しない。生えたとしても栄養価の低い草で、その草を食べた家畜は太ることはない。また、雪が降らないため、地面むき出しで硬く、家畜の足が痛む。また、冬はそもそも井戸などが凍るため、そこから水を得ることは出来ないが、雪の湿気や水分を多く含んだ草を食べるため、家畜は基本的にはのどが渇かない。乾いたとしても、雪があるので、それを溶かして飲ませれば良いので簡単である。しかし、雪が降らなければ、水を得る術がなく、家畜はやせる一方である。

乾いた地域でできた草はzovlogoと言い、充分な水分を伴った栄養価の高い草をuutsと言う。

このゾドの場合も、雪が降る様子が一向になければ、冬営地を移動する以外に冬を乗り切る術は無い。

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家畜の交尾

家畜の交尾時期はそれぞれ異なるが、小型家畜は春分の日頃に出産にこぎつけるように配慮して行われる。この日は、春の真ん中の兎月に値する。大型家畜については、小型家畜ほど気にして交尾時期を配慮しない。また、とても寒い時期に出産してしまうと凍え死んでしまうし、夏近くに産まれるとその年の冬春が厳しかったら、体力的に厳しいものとなる。そのため、交尾時期についてはより注意しなければならない。

ラクダは1年おきの出産となるが、それ以外の家畜は出産後15~30日で再び交尾時期に入る。

春、出産の時期を終えると去勢していない羊や山羊は別にしておく。そうしないと、予想もしない妊娠の可能性が出てくる。秋にまた一つにまとめ、交尾時期に入る。また、春に産まれた子家畜の去勢も夏前に行う必要がある。そうしないと、冬に出産を迎えてしまうことがある。

家畜の少ない家では、あえて別々に放牧はしない。フグ(hug)と呼ばれる性器を被う布をつけて放牧する。日中は、フグがちゃんと付いているか確認しながら放牧し、夜はそれを取り外し繋いでおく。そうしないと毛並みが悪くなり、病気になりやすい。

ちなみに、家畜の妊娠期間は、羊や山羊が5ヶ月間、牛が9ヶ月間、馬が11ヶ月間、ラクダが13ヶ月間と様々である。そのことを考慮して遊牧民は交尾時期を考える。また、ツァガーンサルになると家の南東にあるオボーに夕方、全ての去勢されていないオス家畜のたてがみや毛などを捧げ、多くの家畜に恵まれるように願う習慣があるという。他にも、交尾時期に入ると、米をまき、子孫繁栄を願う習慣もある。

去勢されていないオス家畜を屠殺して食すことはない。万が一死んでしまった場合は、頭を高い場所に置いて敬わなければならない。母家畜も同様に敬われるので、屠殺して食したり、交換の対象にならない。ただし、何度も出産を繰り返し、年老いたものは、冬春用の食料として屠殺される。そうしないと、遊牧民の食すものがなくなってしまう。

さかりのついたオスラクダの性格はかなり獰猛になり、狼さえも逃げ出すという。さかりのついたラクダは、草も水も口にしないので、お腹が背中にくっつくくらいにへこんでしまう。また、口に泡を吹き出し、うなじから蒸気があがり、冬なのでその蒸気が霜となるため、頭や首、前コブは真っ白に見える。うなじからにじみ出てくる水分は意識を失った人に燻して使ったり、伝染性の病気の治療に用いたりして使うという。

また、歯をきしませ、胸を広げ、低く響くようにうなる。そして戦闘体制を取るかのように半分上体を起こして座り、身体は岩のように硬く、尾を上下に揺らし、力強く身体を叩く。

噛んで放さないオスラクダは危険である。トムゴ(tomgo)と呼ばれるものを頭に付ける。あごの開きを上下調節できるように作られた輪環が付いており、目尻の辺りや鼻の部分の赤い柔らかい布でクッションを作り、鼻や頬が傷つくのを防ぐものが付いている。これによって、ただ草を食べ、水を飲むことのみが自由となる。

また父家畜は華美にしておく伝統がモンゴルにはあるので、そのトムゴも明るい赤い羅紗で覆われ、額や頬、鼻には赤い紐で花が作られ、口の両辺りには赤い房がついている。更に、噛み癖のあるラクダには、その目印も兼ねて頭の上にやはり赤い帽子の房を付ける。

また、噛んで放さない癖のあるラクダから身を守るために、ひじまでの長さのある木のムチを持ち、何かあればラクダの開いた口(丁度、ひじまでの長さほど開く)に縦に差し込んだり、馬のあぶみを外しておき、いつでも口に投げ込めるよう準備しておく。しかし、飼い主の遊牧民には忠実であるというから、不思議なものである。

秋冬のオス牛も狂暴である。この時期は、群れを平らな山頂や尾根、谷あいに置き去りする。もし、ゲルの近くに連れて来たとしても数日後にはいなくなってしまう。なので、遠くから姿を見張ることをする。

ハイナグ(牛とサルラガグの子、hainag)のメスは、乳が多くでるだけではなく、他にないほど脂っこい。しかし、出産率が悪いので、ハイナグだけを飼っている遊牧民はいない。ハイナグから産まれるのは、オルトーム(ortoom)である。オルトームからは種の質が悪くなるので、ハイナグのオスは全て去勢される。

ぼるふ〜草原記

皮なめし

夏と秋の境に皮をなめす作業が始まる。まずは、夏の馬乳酒やシャル・スーからガン(gan)と呼ばれる皮をなめす薬を作る。ほとんどが蒸留したシャル・スーに塩を加えて作る。作ったガンの中に皮を浸し、時折混ぜるとガンが中に浸透して柔らかくなり、再び硬くなることが無い。しかし、子羊や子山羊の皮は、ガンに浸さない。タラグやアールツに塩を加えたものの中に浸す習慣がある。

また、春に冬営地の家畜小屋にある糞の中に、大型家畜の皮を埋めても柔らかくなる。湿気がある中で、この作業を行うとより柔らかくなる。湿気があまり無い場合は、皮をなめす道具を使ってもっと柔らかくすることが重要である。しかし、逆に皮なめす道具に湿気は禁物である。よって、湿気の状態を考えて、皮をどの方法でなめすかが重要である。

皮をなめすには、何日もかけて作業を行う必要がある。革紐を作るには、浸して細く切った後に木か石でなめすなどして柔らかくする方法がある。また、牛糞や馬糞を燃やした煙で燻したり、木槌で一つ一つ叩いて均等に柔らかくすれば、なお良い。

その他、どの部分を何に使うかも重要である。のろじかの雄の首の皮は、丈夫なので馬を捕まえるためのオールガの輪の部分を作るのに適している。

正しくなめした皮はまるで布のように柔らかくなり、遊牧民の様々な重要な道具を作り上げるのである。

私の持っているムチの皮の部分のなめしが悪く、とても硬い。それを見た1人の遊牧民は、皮の部分を水に浸し、それが完全に乾く前に、全体にむらなくタくれたルバガンの油を塗ると良いと教えてくれた。残念ながら、タルバガンの油を入手することができす、ムチはそのままである。

子馬の焼印

夏の最初の月に母馬を捕まえ乳搾りを始め、秋の最初の月に放す。時には暖かい天候が続くと、放すのが遅くなる地域があるが、早めに放すと子馬が肥えるので、越冬するには安心である。
秋の縁起の良い日に、子馬を繋いでいたゼルにアルツの香を焚きく。最後の乳搾りを行い、子馬のハズナを外す。その後、ゼルを地面から外して巻き、杭を引き抜く。

子馬の焼印

その後の穴に、乳を垂らし、大麦や米を撒く。こうして、来年も子馬が沢山産まれ、馬乳酒ができるよう祈願する。そして、その穴に家畜がつまずかないように、穴を丁寧に埋める。

子馬のハズナを外す前に焼印を行う。赤く熱した印のついた鉄を馬の左尻に当てる。この行事は、もちろん祖先から引継がれてきたものであるが、近年になって馬泥棒も増え、その対策も兼ねて、焼印は行われているようである。

全ての焼印が終わると、使用した鉄の印を馬乳酒に浸す。家によっては、その鉄の印から手のひらに直接馬乳酒の滴を垂らしてもらい、飲む。または、その馬乳酒をその後の宴会で飲んだりする。

焼印を終えると、子馬のレースを楽しみながら放す。まずは、母親を一定方向に追いたて、遠くにやる。その間、各自は1頭ずつ子馬を抱き、一斉に放す。誰が一番早く、母親馬に追いついたかを楽しむのである。中には、毎日放牧へ行っている方向へ迷わず走っていってしまい、爆笑の元となる。全ての子馬が母親と寄り添うのを見届けた後、宴会となる。

子馬の焼印

焼印の種類

子馬の焼印

子馬の焼印

子馬の焼印

子馬の焼印

ぼるふ〜草原記

草刈り

秋を本格的に迎える前の7、8月に冬春用の家畜の飼料として、草を刈り準備をする。

草刈りをする場所は、1年おきに刈るのが理想であるが、収穫の良い草地だと毎年刈ってしまうのが現実であり、他に草地としてよい場所が沢山無いのも現実である。

草を刈るにあたって、馬やラクダなどに鎌のついた荷車を引かせて刈るため、なるべく平らな土地が適している。草を刈る時期は、越冬のために家畜を肥やす時期でもある。そのため、草刈りに使う家畜は繋いでおき、なるべく体力を消費させないようにし、栄養も十分に与える。

平らではない土地などは、人間が手に熊手を持って刈る。手で刈ると仕事の進みは遅いが、子家畜に適した軟らかい草を見付けるのには適している。この草を少しずつまとめ、家畜に食べられないように木の枝で乾燥させ、湿気を取る。そうすると匂いの強い良い草となり、この草を「ボーズ」と言う。

草の養分が豊富なのが7、8月の境であるため、その時期を狙って、この作業は行われる。この時期を過ぎると養分は落ちるだけでなく、草が枯れることにより硬くなってしまい、熊手や鎌の刃がこぼれやすくなってしまう。

草刈りをする時には、時間のロスも考え、草地にテントを張り数日間泊り込みで行うのがベストである。こうやって、草を刈るのは男性で、女性や子供は自分たちの仕事の合間をぬぐって、刈った草を干したり、まとめたりするのを手伝う。

また、ゴビ地方では野生のネギが生えており、それを放牧の際に馬に袋をぶらさげ、摘んで来る。そしてシャルトスと混ぜて栄養価の高い飼料として保存する。時おり、ゲルを入って左側のところに糸でぶらさげて乾燥させているのを、見ることがある。

この飼料を準備しないと、ゾトと呼ばれる雪害や厳しい春になった場合に、家畜を養いきれない危険性がある。

しかし、ウランバートルに近い草原では自分たちで草を刈ることなく、現金にて購入するのがほとんどである。

ぼるふ〜草原記

家畜の調教

夏になると、まだ人を乗せることに慣らされていない荒い馬を温和な性格の馬に調教する。

暴れる馬を砂や石のある場所に連れて行く。砂の場合は足を取られ、石の場合は石につまずき、暴れることができない。馬や牛、ラクダを輸送用に性格を大人しくさせるのは、簡単ではない。何年もの経験が必要である。しかし、牛やラクダのほとんどは、荷を載せることをちゃんと学ぶ。荷を載せることを学んで、背中がくすぐったく感じなくなった牛は乗ることもできる。ラクダを調教するのは、難しい。恐ろしく暴れるという。しかし、2つのこぶがあるので上に乗っているのは容易ではある。とはいうもの、調教者には経験が必要で、男性の体力や能力、手練が問われる。調教された牛やラクダは、背に下敷きのフェルトや鞍を置かれると暴れなくなり、一日中群れへ送り出すができる。小さい頃に寒さ避けとして背中を被いで覆われていた牛やラクダ、乳搾りの度に繋がれていた馬は、大きくなって調教するのが簡単である。

馬を調教するのには、注意が必要である。酸っぱい乳を飲んでいた暴れ馬は力強い。ほとんどが2歳の時に調教されるが、時には3歳、4歳の時に調教する。5歳になるとかなり野生化しているので、調教するのは困難になる。このことから、1歳で繋ぎ、2歳で従い、3歳で歯が生え、4歳で身体を引き締め、5歳で体力を回復させるという言葉がある。1歳の時に繋がれることを学んだ馬は、2歳になると繋いで引いて行くことも容易であるし、乗り慣らさせるのも早い。

人に慣れていない馬を調教する時は、裸馬、鞍ありなど様々である。裸馬で調教した場合、どれだけ経験を積んでも鞍を置くのが大変である。なので、最初から鞍ありで調教するのが適している。また、ハミも今後使う厚めの金具のついたものを、最初から付けて調教するのが好ましい。その他、ムチを入れたら走るということも覚えさせなくてはならない。側対歩など、特殊な歩みの馬の場合は、その特殊な歩みが失われてしまうので、子供の内には調教せず、大人になってから調教する。

最初に人に慣れていない馬を調教する時には、腹帯を正しく締めることから始める。ねじれていたり、突然続けさまに締めたりすると、腹帯を嫌がる性質になってしまう恐れがあり、また無駄に強く締めるとすり傷ができ、ゆるく締めると鞍が横滑りしてしまう危険性がある。馬に乗る時に腹帯を締め、降りて繋いでおく時に腹帯を緩めるようにするとすり傷ができずに済む。

馬を捕まえる時も、オールガで頭を叩いてしまうとオールガで捕まえられることを嫌がるようになり、捕まえづらい馬になってしまう。また満腹の馬を追いかけて捕まえると、馬の身体に負担がかかるため、好ましくない。

また、鞍は汗がひいてから取り外す。そうしないと背中が腫れ上がったり、急激に身体が冷えて病気になる危険がある。これは馬に限らず、鞍を用いる家畜全てに言えることである。

正しく調教された馬は、飼い主に大変慣れ親しむ。「鞍ありの馬は、飼い主を歩かせたりしない」という言葉があるほどである。そもそも馬は、自分の故郷や家を把握している動物である。遠くに行った馬が、自分で故郷に帰ってきたという話は多い。また、真っ暗闇でも、馬はちゃんと家まで帰ってくれる。だから、もし遊牧民の家で酔っ払っても、馬の上にしがみついている体力さえあれば大丈夫。馬はちゃんと家まで送り届けてくれるでしょう。現に、私は真夜中の12時過ぎに星明りもない暗闇の中で馬を信じて進ませていたら、ちゃんと家まで届けてもらった覚えがある。

ナーダム

ナーダムは、遊牧民にとって数少ない社交の場であり、人々は新しく作ったデールに身を飾り、おしゃれして集う。夜には、コンサートなどが開かれ、村は珍しく夜遅くまで賑やかである。

競馬

モンゴルの競馬は、男女問わず子供が騎手を務める。身体が小さければ、14歳だろうが競馬に出場する。彼らは、少しでも重さを軽減するために鞍のない裸馬に乗ったり、素足で乗ったりすることもある。何10km疾走する姿は、すでに一人前である。

ナーダム

大人は、自分の馬の調教に余念が無い。ナーダムの1ヶ月ほど前から、馬の調教が始まる。体重の少し重くなった馬には、フェルトなどの厚い布を身体に巻きつけ、汗をかかせ贅肉を落とす。できあがった馬の身体はまさに芸術作品である。

ナーダムが近づくと、数kmから走ることに慣らさせる。これは、馬も騎手となる子供にとっても重要である。また、実際の距離はかなり長いため、スピード配分なども勝利に大きく響く。

ナーダム当日。騎手の子供達は、競馬用の衣装に着替え、競馬馬を引き連れ、早朝ゲルを出発する。その際、子供は馬を引き連れ、ギンゴーを歌い、ゲルのそばの馬繋ぎ場を何周かする。馬主は勝利と無事を祈り、少し離れたところから、ミルクを奉げる。出発する時には子供の鐙にミルクを掛ける。

会場に着くと、馬の検査が行われる。モンゴルの競馬は主に年齢別になっており、歯を見てチェックされる。

種類別に以下の距離を走る。

  • 6歳馬(ikh nas)30km
  • 5歳馬(soeolon)28km
  • 4歳馬(hyazaalan)25km
  • 3歳馬(shudlen)20km
  • 2歳馬(daaga)15km
  • 種馬(azraga)28km
  • 側対歩の馬(joloo)10km

(ただし、距離は地方により少し異なる)

ナーダム

レースが始まる前にそのレースの出場馬全てがギンゴーを歌い、周る。この歌によって、子供の闘争心は一層高まる。そして、先導者に引率され、スタート地点へ。馬が戻ってくるまで、大人たちはしばし相撲や宴会を楽しむ。

馬がゴールに近づいてきたことを人々が口々に知らせると、馬主は、馬を駆け、自分の馬を探しに行く。

次々にゴールに駆け込んでくる馬も子供も、息絶え絶えである。中には落馬し、馬のみがゴールしてくることもある。(もちろん、その場合は順位に認められない。)
表彰式では、各レースの先着5位にツォル(称号)が唱えられ、馬乳酒が掛けられ、ハタグが掛けられ、祝福される。

また、2歳馬のレースのみ、来年頑張るように、とブービー賞がある。

相撲

ナーダム
モンゴル相撲に土俵も制限時間も無い。手の平が着いても、大丈夫である。

身に着ける衣装は、帽子(),胸の開いたチョッキ()、パンツ()、長靴()である。何でも、昔々、相撲を競ったところ、優勝したのはこっそり参加した女性だったという。これに憤慨した男性は、一目で女性と分かり、女性が参加できないよう胸の開いたチョッキを着るようになったという話もある。

国のナーダムは、512人の力士が参加し、1度に16組の取り組みが行われ、トーナメント式で試合は進められる。村のナーダムでは、強者は国のナーダムに参加してしまうため、そこまで人数も集まらない。

試合開始前、土俵に揃った力士には1人ずつ介添人がつく。彼らは力士の帽子を受け取り、ツォル(称号)を唱える。その間、力士は鳥が舞うようなポーズで介添人の周りを回る。取り組む直前には、自分の身体を叩き、気を引き締める。

技は何百にも及ぶと言われるが、素人目には技のことはよく分からない。ただ、足技で倒したり、衣装を引っ張って倒したりする姿を良く見る。

勝敗がつくと、勝者は腕を広げ、再び鳥が舞うように舞う。敗者は、チョッキの紐を解き、勝者の脇の下をくぐる。勝者はその後、帽子を被り、再び鳥が舞うように舞いながら、国旗を1周する。そして、そこに備えられているビャスラグ(チーズ)を取り、ばらまく。このビャスラクは、幸運を招くと言われ、人々はこぞって受け取る。その姿は、日本の豆まきと同じである。

力士の称号は、以下である。

  • ハヤブサ 5,6回戦を勝ち抜く
  •  7,8回戦を勝ち抜く
  • 獅子 9回戦を勝ち抜き優勝するか、3回準優勝する
  • 巨人 獅子の称号を持つ者が優勝、もしくは3回準優勝する

この名称の前に、国(uls)、県(aimag)、村(sum)が付く。

弓矢

弓矢の競技は、主に大きな都市でないと行われないため、実際に私は見たことがない。

ぼるふ〜草原記

フェルト作り

羊や子羊の毛を刈るのが終わると、フェルト作りが始まる。フェルト作りは、夏の中旬にだけ行われる。これが遅くなると、家畜の太り具合に影響を与える。

早くから毛を打つ準備を始める。昨年取っておいた短い毛を用いても良い。毛刈りとフェルト作りは男性の力量が求められる仕事でもある。羊毛脂は暑いと固まらないので、雲も風も無く太陽が照りつける暑い日に、毛を打ってフェルトを作る。雲が少しでも太陽を隠せば、仕事を中断する。毛を打ってフェルトを作る仕事は家族総出で行い、多くの人や馬が集まり、宴会となる。一同に集まる数少ない機会なので、遊牧民にとってフェルト作りは賑やかで楽しいものである。

毛を何日もかけて打つ。天気が良い日が続けば、そんなに日にちはかからない。作る量は、家によってはゲルを覆おう完全なもの、およそ3m×2mを10枚作り、ある家はゲルの壁に巻くフェルト、ウルフ、靴下、靴、敷物、ラクダに用いる座布団くらいを作る量を作る。

フェルト作りは、老若男女構わず参加する。打って準備した毛を古いフェルトの上に均等にちぎって置く作業は、女性が行うのが適している。均等にちぎって置き、水をかける。それをゴル(gol)という2アルド(1アルド=両手を広げた長さ)くらいの長さの丸い棒に巻きつけ、外側から皮でくるみ、細い皮紐できつく縛り、1、2頭の馬で引っ張る。そうするとフェルト自身が圧縮し合い、硬くなる。

フェルトを引っ張る馬は、何日も前からつないでおき、力を蓄えておく。地域によってはラクダを使うところもある。馬にとって、フェルトを引っ張る作業には、良い点と悪い点がある。良い点は、この作業を行うと馬の足が丈夫になるので、つまずかなくなる。悪い点は、時々胸部が腫れ上がり、すり傷ができてしまう点で、遊牧民はそれに注意を怠らない。この作業を終えると馬を太らせるために、すぐに放牧する。

馬で引っ張る時に、子供が馬に乗ると馬に良い。また、地面が平らでゴツゴツしていない場所で引っ張る必要がある。そうしないと、穴が開いたり、場所によっては薄くなったりしてしまう問題がでてくる。フェルトは、厚さが均等でまっすぐになるようにしなくてはならない。

最初に圧縮したフェルトをチェックして、少し薄みのある所に馬のたてがみを小さく切って散らして均等にし、強度を増す。