ぼるふ〜草原記

かまれた

2003年8月22日。その日は快晴だった。お客さんもいなかったので、近所のミジさんのお家にお泊りに行っていた。今日はお父さんの誕生日なので、村から国際電話をするつもりだった。

ミジさんの家は、今年から凶暴な番犬を飼った。コイツが良く吠えて、良く噛む。この前、アルタンばあさんが噛まれたと聞いた。私も昨日、この家の娘のオトゴと夜のトイレに出たら、お尻を噛まれそうになった。未遂に終わり、すり傷で済んだ。だから、今日は絶対にオドコから離れない!

朝、顔を洗いにオドコと外に出た。石鹸を忘れたオドコが一瞬ゲルに中に入った。私は、扉のすぐ外で一瞬置いていかれた状態に。その瞬間!右膝裏に激痛が、思わず飛び跳ねてゲルに入る。お母さんに「噛まれた?」と聞かれたが、心臓がバクバクしていて、「わからない」と答えるのが精一杯であった。

椅子に座って、心を落ちつかせていると、右足がジト~として
きた。なんだろうと思って、ズボンをめくると何筋もの血が垂れてきているではないか。慌てて、膝までまくりあげると、右膝の裏にきれいに4つの穴が開いているではないか。

それを見たお母さんが「なんだ、噛まれているんじゃないの!」と怒りながら、ヨードチンキと絆創膏を持ってきてくれた。ヨードチンキで消毒をした後、どこから持ってきたのか、お母さんの手には何かの毛が。しかも、それを傷口に貼ろうとしているではないか!「ちょっと待って、それは何?」と聞いたところ、私を噛んだ犬の毛だという。そして、それを傷口に張れば、治ると。それは、絶対に無い!でも、お母さんは有無も言わせず、貼り付けた。しかも、足が痛いのに、私を噛んだ犬に餌をやれという。何でよ~。餌をあげることにより、もう敵とは思わないからだって。マジですか?足をひきずり、支えられながら、餌をやった。気分は完全敗北。

やっぱり狂犬病が怖いので、村に行って注射をしてもらうことに。馬に乗り、13km離れた村へ行く。

お医者さんに「どうしたの?」と聞かれ、「犬に噛まれた」というと、最初の一言が「犬の毛貼った?」。「??貼った。」「じゃあ、大丈夫」そんな訳ないでしょう!!

お願いして、注射を打ってもらうことに。へそにすると聞いていたので、お腹を出したら、背中を出せという。肩甲骨に針がブスッと刺され、オドコのお姉さんのオユカと私は「あっ」。同時に「これって、タルバガンのペストの注射じゃない?」注射担当のお医者さん「そうよ」違うでしょう。犬に噛まれたって言ったでしょう。「じゃあ、もう一本打つ?」

ワクチンって1日に2種類打っていいの?そのまま帰る。
幸い、傷はすっかり良くなった。

余談。10月初旬、帰国したときのこと。モンゴルで犬に噛まれたことを成田空港の検疫の受付で告げると、それは大変だと医者を呼んでくれた。医者に告げると第一声が「えっ、死んじゃうよ!」。思わず「?」。その後は「狂犬病なんて診たこと無いよ。」と医学書を読み上げ始める始末。時間の無駄。そう思って、ワクチンを持つ病院のリストをもらい出ると、さっきの受付のお兄さんが「ワクチン打ってもらいましたか?」と。ワクチン、ここにあるの?結局、駒場病院に通った。日本の医学に未来はあるのか?
何でかというと。。。

 

サンボーと結婚するとき、99%の人がびっくりした。そして、「それで良いの?」と聞いた。何でサンボーと結婚を決めたのか。

モンゴルに来たのは、のんびりしたかったから。しかし働きに来たら、そういう訳にもいかない。ましてやモンゴル。初めてツーリストキャンプで働いた時は、本当にびっくりした。「時間」に対して、とってもルーズなのである。「5時にお客さんがシャワーに入るからね」と言ったのに、5時にシャワーを温め始める。シャワーの水を温めるのに1時間は掛かると知っているのに。何につけても、こんな感じ。ひどいと「時計が無いから、分からない」と言う。ならば、時計になってあげましょう!とキャンプ内を、時間を告げながら、走り回った。その内、さすがに皆が時間を気にし始めてくれた。

でもモンゴルで何夏か過ごすと、「時間」に対する日本人とモンゴル人の感覚の違いがわかってくる。乗馬の開始の時間が9時だと、遊牧民はその1時間以上前には馬を探しに出かける。想像通りの場所に馬がいれば良いのだが、外れると大変である。放牧だから、柵がある訳ではない。どこまでも行けてしまうのである。予定通りにはいかないのである。

ある日のこと。義弟のジャウガーが乗馬用の馬を探しに出掛けた。必要な数の馬は連れてきたが、群れにいるべき1頭の馬が河の向こうに渡ってしまっているのを見つけた。でも、その馬を群れに戻すと、お客さんの乗馬の時間に遅れてしまう。彼は、「時間」を守ることを優先した。戻ってきてサンボーにそのことを告げると、サンボーが激怒した。なぜ、その馬を群れに戻さなかったのか、と。結局、その馬は行方不明になり、見つかるまでに半月かった。

ほんの30分位の遅刻を守る為に、半月を失う。この場合は、馬が見つかったから良かったのだが、失ってしまう可能性も高いのである。

でも数日しか滞在しない旅行者に、そこまでは伝わらない。旅行者も貴重な時間を割いて旅に来たのであるから、満喫したいのである。だから、言葉で説明してもピンとはしない。

この板挟みが意外とツライのである。馬を待っている時間、お客さんを退屈させないように、モンゴルについて勉強してしたことをお話したりして、フォローをする。一緒にフォローしてほしいガイドのモンゴル人も、都会っ子だとその点が良く分からない。お客さんと一緒に責めて来られると、正直ツライものがある。もちろん、謝らなければならない事なのであるが。

このような感じで、日本人の旅行者の希望の添えられるように、でもモンゴル人のことも考えてあげられるように、仕事の流れを考えなければならない。そうすると、あれもこれも考えなくては、とパニックになるのである。

そんな時、サンボーはやってきて「忙しそうだね~」と呑気に声を掛ける。イライラしている私は「そうなの。これもあれもやらなきゃいけないの!」と叫ぶと「働き者だね~」と言うサンボー。そののんびりしている様子に、思わずガクッとくる。そして、イライラしている自分がすごく恥ずかしくなる。そして深呼吸すると、悩んでいたことの答えがパッと整理できたり。

こんな風に、サンボーは私の凝った肩をほぐしてくれるのである。
それだけじゃ、結婚する理由にならないのでしょうか?

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