家畜の出産

小型家畜は大型家畜に比べ子供が小さく、1日に何匹もの母親が出産をし、産まれた子供は1日に2度乳を飲むので、遊牧民の仕事は大忙しである。また家畜は、朝昼夕を問わず出産をするので、本当に暇など無いものである。

家畜の出産

日中、羊の遊牧に行く時には必ず子羊を入れる袋を持っていく。これは、フェルトで作られラクダの毛で縫われた袋である。中には、外側に布のついたものもある。この袋の中には子羊、子山羊が3、4匹入る。もし、それ以上の子供が産まれたら、その子供をうまく誘導して家まで連れて行かないといけない。袋は濡れると入れた子供が凍りついてしまうので、袋から取り出したら、必ず良く乾かしておく。

夜中に小型家畜が出産するともっと大変である。春半ばの夜中はしばしばマイナス20℃に達する。だから、出産した子供を母親がすぐに舐めて身体の周りに付いた子宮の残りなどをとってあげないと凍死してしまうことがある。しかし、時には出産して舐めてもらえない子供が夜中、羊で満員の柵の中でどこにいるか分からなくなってしまうことがある。産まれたばかりの子供は泣き声をあげないので、探すのは大変である。

家によっては、柵小屋の屋根から布を前面に垂らして風が入るのを防ぐことがある。そうすると、子供が寒がることなく、朝になる頃には乳を飲むことさえ覚えているという。また、もし元気な子供が産まれれば、人工的に哺乳瓶で乳を飲ませる仕事をしなくてすむ。時期的に遅く産まれた小さい身体の子供が沢山いると秋までにそんなに太ることができないという。

2歳の子供がいる羊、牛、山羊の母親が再び出産すると、2歳の子供に乳を飲まれてしまう危険がある。そのため、2歳の子供に、鼻輪や木の錠、木の釘みたいなものを鼻に通す。これは、草を食べるのに邪魔にはならないが、乳を飲むことができないというものである。また、地域によっては、くつわをする所もあるという。

出産の時期の天候は不安定なので、子供用に腹巻(elgevch)を用意しておく。また、ラクダの子供には帽子(zolaivch)を作り、身体を寒さから守る。
家畜の出産

産まれたばかりの子供の腰を紐でつないだり、縄でつないだりしてゲルの中に泊めることがある。産まれたばかりの子供のうちに頭や足を結ぶことを覚えさせると、大きくなって頭や足をつかんでも怒らなくなる。そうすると、乳搾りなどの時にとても楽になる。ラクダは、頭と足をつなぐことを(tabiglakh)、覚えさせる。

1.  大型家畜は、出産直前になると、遠くへ行ってしまう。

大型家畜のラクダや牛は、出産が間近になると群れから離れて遠くに行ってしまう習性がある。もし、複雑な地形の場所などで出産されてしまうと、それを探しに行くのは難しい。しかし、放っておけば、産まれた子供に事故が起こるかもしれないし、狼に襲われるかもしれない。だから、人は出産間近の家畜には、特に気を付ける。

家畜の出産

朝、牧草地に追いやった時、妊娠している家畜のお尻の隆部と尾の付け根の間のクボミの筋肉に気を付ける。その筋肉がへ込んでいれば、その日に出産する兆候だという。そうしたら、その家畜から目を離さないようにする。

2.  初乳

家畜の出産時期が始まると、乳製品作りや乳搾りが盛んになる。肥えたまま越冬した家畜は、初乳を多く含んで出産する。薄黄色の初乳で満腹になった子供は、健康で大きく、かつ早く成長する。しかし、乳を飲みすぎると中り、病気になるため、適度な量で止めることが必要である。

出産したばかりの母親家畜は乳が途切れることがないので、人は余分な乳を搾り、乳製品を作る。初乳はエーズギーを作るのに適しており、ウルムやタラグを作るのには、適していないという。

3.  子取らせ

馬を除く、羊、山羊、牛、ラクダといった家畜には、しばしば産まれた子供をかえりみない母親がいる。そうすると、人が手助けをし、子取らせをする。しかし、馬は子供をかえりみないということは無い。

人でも、子供をかえりみない母親はいる。モンゴルでは人の子取らせの方法として、こんな話がある。わざと母親の見える所で、布に巻かれた赤ん坊を大地に置き、馬の群れをその赤ん坊のほうへ追い立てる。馬は賢い動物なので、生き物を踏むことは無いので、もちろん布に巻かれた赤ん坊を避けていく。しかし、赤ん坊の方へ疾走してくる馬の群れを見ると母親は、確実に走って行き、子供を抱き上げるという。

それでは、家畜の場合は、どうであろう。

家畜の出産

家畜の出産

家畜の種類     方法
  • 唇をブルブル震わせて、音を出す。
  • “トーロイ”と歌う。
  • “ホールボイ”と歌う。
山羊
  • “ゾーゾー”と歌う。
  • “ウーブル”と歌う。
  • “フース”と歌う。
サルダック
  • “フース”と歌う。
ハイナグ
(牛とサルダックのハーフ)
  • “フース”と歌う。
ラクダ
  • “フース”と歌う。
  • 馬頭琴を聞かせる。
  • 口琴を聞かせる。
  • 馬頭琴をコブにぶら下げ、放牧すると風がメロディーを奏でるので、それを聞かせる。

子取らせには、家畜を感動させる静かなやさしいメロディーの歌を聞かせる。有名な話としては「らくだの涙」がある。歌を歌い、馬頭琴の演奏を聞かせることによって、母親ラクダが子ラクダに乳を与えるというお話である。

また、他の方法として、家畜は塩やソーダを好む動物であることから、出産した子供のしっぽに塩かソーダを塗り、それを舐めさせるという方法もある。

子供をかえりみないのは、子供が軟便をした時や、休息する場所や小屋が変わると、子供をかえりみないことがあるという。そもそも家畜は、出産した子供の匂いは認識しているが、毛色や顔は認識していないらしい。また、子取らせは短ければ、2,3日でうまくいくが、時には長期に渡ることもあるという。なかなか子取らせがうまくいかない母親に対しては、家族総出で子取らせの歌を歌うこともする。

また、出産した子供が死んでしまった時は、他の母親の子供を取らせ、2匹の母親が1匹の子供に乳をやるようにさせる。こういう羊の母親をテレー羊(telee honi)、テレー子羊(telee horga)と呼ぶ。

 4.  大きくなった子供

子羊や子山羊の前歯が突き出てくる頃から、噛み砕いて飲んだり、舐め始めたりする。この時に草を食べることを覚えさせる。夏や秋に草を刈って子供のために準備をしておく。カミレツ、ハルガイといった太くて硬い草は含まず、軟らかいかもじ草類の草が適している。

子供の草は、束ねて柵や小屋に固く結んで与えるのが良い。そのままバラバラにして与えると、その上を踏み歩き、食べるより遊んでしまう。

小型家畜が大きくなると、ラクダが出産し始め、馬、牛と出産が続く。そうなると、遊牧民のゲルの周りは様々な動物の鳴き声で賑やかになる。

子供が大きくなってくると、柵の中に草や水を置き、塩やソーダを舐めさせる。そして、子羊や子山羊の場合、朝晩は母親と一緒にする。少し遅れて産まれた子供をこの時母親の元に置いてあげる。そうしないと、母親を見つけて乳を飲むことが出来ず、手間取ってしまう。また、落ち着きのない羊、山羊の子供から先に乳を飲ませる。その他、他の母親からも乳を飲んでしまう食欲旺盛な子羊、子山羊(govshaa)に注意しないと、その母親の本当の子供が乳を飲めなくなってしまう。

春、雪の下に生えた新しい草を食べた家畜は丈夫になると言われている。なぜならば、ほとんど枯れなかった秋の草は、春に雪の下から出てきた時に養分が高いためである。

子供達が母親と共に放牧に行き始めると、遊牧民は注意すべきことが増える。岩や茂みに隠れて寝ていた子供達が鷹などに襲われたり、群れから遅れたり、迷子になったりという危険があるからだ。そのことから守るため、細心の注意を払う必要がある。また、子供は母親に追いつけずに疲れ果て、痩せるという問題も起こる。

中には、疲れ果て死んでしまう子供もいる。そうやって死んでしまった子供の皮は軽くて暖かいため、デールの内側に張られる。

家畜の出産

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