ぼるふ〜草原記

遊牧

1.  春

馬は遠くの山へ暗いうちに追いやる。毎日家に戻しはしないで、時々集めては確認する。馬を乗り換える時には家に戻してくるが、それでも、草原で乗り換えてしまうこともある。

ラクダは時々、外へ行く。夏には、山間、谷間、草原へ。冬春には川のそばの草のある低い所へ放牧する。冬春の寒い季節に高い山頂などへ行くと滑って危険である。

牛や羊、山羊は毎日夕方、家へ戻す。そうしないと迷子になってしまうかもしれない可能性がある。

馬もしくは牛の放牧に行く人は、投石器(duuguur)を持って行き、家畜を集める。投石器の石の音を聞いた牛は尾を高く上げ、ハーハー言って駆けて行くから、面白いと言う。

お正月も当番である家は家畜の面倒をみる。お正月は、草がぐるりと一周生えていない場所の真ん中に放牧する。そうすると、羊はその中で草を食べ歩き、草の無くなっている周りの場所にたどり着くと再び真ん中に向かって進む。そのため、遠くに行く心配が無いというものである。まさに遊牧民の知恵である。しかし、万が一隠れた場所に行ってしまうと迷子になる可能性があるため、当番の人は、少しゲルにいては家畜の様子を見に行くのである。

2.  夏

子羊が大きくなる春後半頃から、母親と一緒に放牧していたのをやめ、別々に放牧しはじめる。そうして、子羊だけを1ヶ所にまとめ、放牧する。そうなると、放牧は子供たちの活躍の場となる。小さな家畜は放牧地へ行こうとしないので、子供たちは短いムチを持ち、近所の家と交替で子羊の放牧へ行く。最初の頃は1回乳を搾り、その内1日2回乳搾りをするようになる。1回だけ乳搾りをする時は、羊の親子は昼に合流させ、放牧は別々の方向へ行く。2回乳搾りをするようになると、夕方乳搾りをした後、母親の元へ追いやり乳を飲ませる。その後は、別々に柵に入れる。

森林のある地域は、親子を離し、子は柵の中に入れ、親は柵の中に入れずに寝かせることが多い。そうすると、毛が黄色くならず、太って力強くなるなど、良い点があると言う。草原や砂漠に近い地域では、子羊も柵に入れない。親と子を柵の反対側に離して寝かせる。離したばかりの数日は、見張りが必要である。最後には覚えて、自ら別々に分かれて寝るようになる。

羊の乳搾りの最盛期は、6、7月である。7月の終わりに子羊の毛刈りをする。そうすると、母親が自分の子供を認識しなくなることがあり、その頃から乳の出が悪くなる。その時に乳搾りをしないでいると、乳房が腫れ上がる病気になるので、注意が必要である。そうして、7月末には羊の乳は少なくなる。乳の出が悪くなった母親の子供から、まず親離れさせる。山羊の乳の出が悪くなるのはもっと遅いので子山羊はまだ沢山いるし、残った子羊はあっちこっちに行くので子供たちにとってはまだまだ大変である。山羊は秋の雪が降る頃まで、乳の出は悪くならないので、まだ仕事は当分続く。

夏の子羊をまとめはじめる頃、遊牧民は夏営地に住まいを移す。主に、大きな川河の岸、広く開けた水のある場所、広い谷間などに住まいを移し、近め近めにゲルが立ち並ぶ。また乳を確保するために子羊、羊を別々に放牧することが多い。しかし、毎日別々に放牧するわけではない。薪などの採集などで仕事が追いつかないと、別々に放牧に出るという手間はかけない。

また、夏は主に家畜を太らせ、越冬できる身体を作るという仕事が重要となる。
羊を2回乳搾りする場合、1回目のお昼には子羊は離れて山や川にいる。一方、2回目の夜には子羊はまとめておく必要がある。

羊の乳搾り時には、子供たちが手伝うことは沢山ある。乳搾りしやすいように首を交互に縛り付けたり、涼しい雨の日には1ヶ所に集めたりする。首を縛られることに慣れた羊は、自らやってきて止まるので良いが、慣れていない羊は最初の頃、嫌がり自分の首をしめてしまい、大変なことになる。

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